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現地レポート

天皇杯・皇后杯(オールジャパン2015) 総括 ~真実のバスケット愛とともに~ RSS

2015年1月13日 18時04分

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日立サンロッカーズ東京のオールジャパン初優勝から一夜が明けた。オールジャパンに出場するバスケット選手にとっては、この大会が終わって初めて、お正月を迎える気持ちになれるものだろう。

しかしながら、頂点に立てるのは男女1チームのみ。日立東京とJX-ENEOSサンフラワーズ以外のチームは、何かしらのしこりを残して、新しい年をスタートさせたのではないだろうか。敗れた広島ドラゴンフライズの#10竹内 公輔も自身のTwitterで「あー悔しい悔しい。次は絶対俺が勝ってやる!試合にも勝負にも!」とつぶやいている。最後の「試合にも勝負にも」というのは、勝った弟の#15竹内 譲次が記者会見でこう言ったからだ。

マッチアップする日立サンロッカーズ東京⑮竹内 譲次(手前)と、広島ドラゴンフライズ⑩竹内 公輔

マッチアップする日立サンロッカーズ東京⑮竹内 譲次(手前)と、広島ドラゴンフライズ⑩竹内 公輔

「優勝までに8年かかった。これまで2度オールジャパンの決勝に出て、その2回とも公輔に負けている。今回は3度目の正直。試合に勝って、(公輔との)勝負にも勝ちたいと思っていた。勝負をさせてくれたチームメイトに感謝したい」
といった言葉を受けてのことだろう。
大学生のころから日本の未来を担う逸材として注目されてきた2人だが、当時は「双子の兄弟」として括られることを、どこかに「自分は自分。兄(弟)とは違う」という意識があって、決して気持ちよくは思っていなかったことだろう。
それが時を経て、竹内 譲次が準決勝終了後に「ネガティブな情報が多い今の日本のバスケット界ですが、(兄弟対決が)メディアの見出しになるのであれば、それはいいこと」と言うまでに変化をしている。自分たちの感情だけで発言をするのではなく、広く日本のバスケット界という視点で発言できるプレイヤーに成長しているわけだ。ベテランの域に入ってきた2人だが、ここからが彼らのスタートラインなのかもしれない。

男子だけではない。女子もまたオールジャパン2015で多くの経験をして、さらなる成長のステップにしていく選手が出てくるはずだ。たとえば、富士通 レッドウェーブやトヨタ自動車 アンテロープスなどは、決勝を目の前にして最後の一歩が出し切れなかった。この悔しさは、決勝で敗れたデンソー アイリスとも、準決勝以前で敗れたチームとも異なるものだろう。主力となりうる若い選手が、ベテランの力を借りながらファイナリストになるための高い壁をどのように乗り越えるのか。その先に見える景色が、彼女たち自身を成長させ、ひいてはそれが日本代表をさらに強くする要素になるはずだ。
むろん追われるJX-ENEOSサンフラワーズも、その場で足踏みをしてライバルたちの成長を待っているつもりはない。

渡嘉敷 来夢(写真左)とともにJX-ENEOSサンフラワーズと、女子日本代表の柱となる吉田 亜沙美

渡嘉敷 来夢(写真左)とともにJX-ENEOSサンフラワーズと、女子日本代表の柱となる吉田 亜沙美

「勝って当たり前と思われているかもしれませんが、自分たちにも足りないところはたくさんあります。チームを信じて、自分たちのバスケットを信じて、努力を続ければ、もっといいチームになる。世界に通用する選手になれる。目指すチーム像に追いつくのではなく、追い越す気持ちで取り組みたい」と、JX-ENEOS、そして女子日本代表の司令塔の#12吉田 亜沙美はそう言っている。彼女のこの発言もまた、試練の怪我を乗り越えたことで、チームをより高みに導き、さらには世界と戦う日本代表さえも背負おうという自覚の表れであり、大人のプレイヤーへと成長している証でもあろう。女子バスケットの戦いはこれからますます熾烈を極めそうだ。

昨年末に行なわれたJX-ENEOSウインターカップ2014(7日間で延べ62,986名)から、元旦より行われたオールジャパン2015(7日間延べ39,971名)まで、連日多くのバスケットボールファンが会場へ足を運んでくださり、ファンのみなさまに支えられて、無事大会を終えることができたと言える。改めてお礼を申し上げたい。
そして、JX-ENEOSウインターカップ2014、オールジャパン2015をきっかけに、バスケットに対する真実の愛で、来るべき新しい日本のバスケット界をともに築いていきたい。

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信じ抜いた初優勝 RSS

2015年1月12日 19時39分

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下賜された天皇杯を#15竹内 譲次が高々と掲げる――オールジャパン2015の男子決勝は、日立サンロッカーズ東京が【81-66】で広島ドラゴンフライズを下し、創部15年目で初のオールジャパン優勝を手にした。

両チームトップの20得点を挙げた日立サンロッカーズ東京㉔広瀬 健太

両チームトップの20得点を挙げた日立サンロッカーズ東京㉔広瀬 健太

勝因の一つは、NBLでも現時点でトップを走るリバウンドの力だろう。そこから繰り出されるファストブレイクは、スピードもさることながら力強ささえ感じるほどだ。敗れた広島の#10竹内 公輔も「今日の日立東京は自分たちの強みを徹底して出していました。それはリバウンドと、トランジション(攻守の切り替え)の速さです。それにやられてしまいました。僕たちがつけ入る隙もないくらい、今日の日立東京はいいバスケットをしていました」と脱帽する。
ディフェンスリバウンドを奪うと、一気に走り出し、相手ゴールに果敢にアタックする。そうして両チームトップの20得点を挙げた日立東京の#24広瀬 健太も「リバウンドの大事さを再認識した」と言っている。
その広瀬がただがむしゃらにアタックするだけでなく、状況に応じたパスを選択していたことも勝因の一つと言っていいだろう。広島は守るポイントを絞り切れずにいた。#15竹内 譲次も「今年の広瀬はいい状況判断ができている」と認めている。

2人の言葉からも感じ取れることだが、日立東京が天皇杯を下賜された一番の要因は一体感、つまりチーム力のアップではないだろうか。チーム生え抜きのベテラン、#28酒井 泰滋が言う。
「今年のチームには一人ひとりの意識の高さが感じられます。みんなが『チームのために』と同じ方向を向いて取り組んでいるから、悪い流れになってもすぐに修正することができる。流れのよくないときにチーム力は試されるのだけど、僕たちも今年のチームが結成したときは苦労をしました。でも自分たちの強みを生かして、周りの力を引き出そうという気持ちのまとまりが、今の爆発力を高めていると実感しています」
それはスタメンの5人だけでなく、控えメンバーたちも個々の役割に徹し、いいプレイを出していることにもつながっている。酒井は続ける。
「僕や譲次はずっと日立東京ですが、僕たちに比べるとチームに在籍している期間は短い選手たちも、チームのためにやろうという意識は同じように持っています」
プレイをしている時間の長さではなく、共有している時間の濃さが、日立東京の一体感を作り上げているというわけだ。

日立東京初優勝のラストピースとなった①木下 博之

日立東京初優勝のラストピースとなった①木下 博之

昨年のオールジャパン2014では、NBL12位で元日から登場し、2回戦で敗れたことも、今年のチームを強くするきっかけにはなっている。「昨年勝てなかったことで、勝ちに貪欲になっていた」と竹内 譲次も認めている。その思いが練習をハードにさせ、ゲームで結果を出し、そのゲームで若手がコートに立つことで「もっと試合に出たい」という欲を生み、また練習がハードになる。そうした好循環が日立東京をより高い地点へと引っ張り上げているのだ。

さらに、と竹内譲次は言う。
「木下(博之)さんが入ったことも大きいと思います。木下さんは勝つために必要なことを伝えてくれます。どういうゲームをすれば勝てるのか、どうすると負けてしまうのかを口でも体でも表現してくれます。その態度は外国人選手に対しても一貫していて、彼のリーダーシップに助けられています」
今シーズンからチームに合流したベテランガードの木下の存在が、チームをまとめあげるラストピースだったとも言える。

己自身を信じ、チームメイトを信じ、そして自分たちのバスケットスタイルを信じる。自分たちが紡いできた時間の濃さを、最後まで信じ抜く。簡単なようだが難しいそれを遂行しているからこそ、日立東京は2015年最初の頂点に立てたのである。

下賜された天皇杯を高々と掲げる⑮竹内 譲次

下賜された天皇杯を高々と掲げる⑮竹内 譲次

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いつか咲かせる花のために RSS

2015年1月11日 19時06分

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今年度の皇后杯を下賜されたのはJX-ENEOSサンフラワーズだった。その名を聞いても、また今回の優勝で2年連続19回目と聞いても「またか……」と思われる人がいるかもしれない。しかし#12吉田 亜沙美の怪我を筆頭に、Wリーグの開幕で敗れ、4試合目にも富士通 レッドウェーブに28点差という大差で敗れたことを顧みると、オールジャパン2015までの道のりが決して決して平坦ではなかったとわかる。そうした苦しい時期を乗り越え、成し遂げた優勝は、またひとつJX-ENEOSというチームを強くしていく要素になるはずである。

敗れたデンソーアイリスにとっても、オールジャパン2015は今後の成長につながる大会だったに違いない。むろん負けて得た手応えなど、勝負の世界に生きる彼女たちにとっては、単純に喜べるものでない。それでも一歩ずつ、着実に女王の足元に近づいていることは実感として残ったはずだ。

諦めず3Pシュートを打ち続けたデンソー アイリス㉛高田 汐織

諦めず3Pシュートを打ち続けたデンソー アイリス㉛高田 汐織

なかでもデンソーの“タカダ”の頑張りには目を引くものがあった。日本代表の#8髙田 真希ではない。怪我がちの#10藤原 有沙に替わって、今シーズンからスタメンの座を射止めた4年目のフォワード、#31高田 汐織である。まだまだ不安定さは残るが、今日の決勝戦でも3Pシュート3本を含む11得点を挙げている。
「悔しいです…前半を勝って折り返したし、けっして勝てない相手ではないと思ったんです。でも最後は経験の差、フィジカルの差が出てしまいました」
高田はゲームをそう振り返る。
しかし第4ピリオド、ゲームの勝ち方を知るJX-ENEOSが一気に畳みかけ、リードを広げていった場面で、追撃のシュートを続けざまに決めたのは、その高田だった。JX-ENEOSが慌ててタイムアウトを取ったほど、効果のあるシュートだった。

得点だけではない。高田はリバウンドにも積極的に飛び込んでいた。相手は渡嘉敷 来夢(190cm)、間宮 佑圭(184cm)、そして宮澤 夕貴(182cm)という女子日本代表チームのインサイド陣である。170cmの高田がリバウンドで勝つのはほぼ不可能に近いが、それでも彼女は怖れずに飛び込み続けた。

積極的にリバウンドに参加した高田

積極的にリバウンドに参加した高田

「高さでは勝てないことはわかっています。でも渡嘉敷さんたちにマッチアップしているリツさん(髙田真希)やソウさん(牛田悠理)が体を張り合ってくれるので、そのこぼれ球を取ろうと思って、飛び込んでいました」
小嶋 裕二三ヘッドコーチが、高田をスタメンに使った要因の一つに、そんなところがある。「高田はニュートラルのボールに食らいつく本能的なものを持っている。それでチームを助けてくれるプレイヤーなんです」
たとえ高さで敵わなくても、飛び込んでいくことでボールがこぼれ落ちてくるかもしれない。たとえボールを奪えなくても、リバウンドを取った選手の近くに立つことで相手の速攻を遅らせることができるかもしれない。「無理でもリバウンドに入っていこう」。高田はそう考えていたわけだ。

それを示してくれたのはデンソーの先輩たちであると、高田は言う。
「ソウさんや、今はサポートスタッフになっている大沼(美咲)さんがそういうプレイヤーで、1・2年目にベンチから見ていて、すごく感動したんです。そしてたとえ取れなくてもリバウンドに飛び込むことが大事なんだなって感じて、それを実践しています」
JX-ENEOSほどの勝者としての伝統があるわけではない。リーグでの成績も上がったり下がったりしているチームだが、それでも選手たちはよりよい選手になろうと、必死に何かを追い求めている。高田のリバウンドやルーズボールは、デンソーが紡いできた伝統の成果と言っていい。

⑧髙田 真希(写真右から2番目)とともに、㉛高田もチームの顔になれるか。期待がかかる。

⑧髙田 真希(写真右から2番目)とともに、㉛高田もチームの顔になれるか。期待がかかる。

「オールジャパンで終わりじゃなくて、ここからが勝負だと思っています。決勝戦の舞台に立てたからといって気を抜くのではなく、この悔しさを生かすことがリーグにつながるのだと思います。またデンソーにはリツさんというインサイドでアタックできる選手がいるので、おのずとアウトサイドが空いてくる。私はそのシュートの精度を高めていきたい。でもアウトサイドだけだと単純なプレイヤーとして守られてしまうので、ドライブやドリブル1対1など、個人の力で点の取れるプレイを覚えていきたいです」
自らの課題については、小嶋ヘッドコーチも同じことを口にしていた。指揮官と目指すべき方向性は同じだということだろう。

高田のコートネームは「サク」。コートで花を咲かせるプレイヤーになってほしいという思いからつけられたのだという。今年の皇后杯では花を咲かせることができなかったが、チームにとっての花を高田はその手で咲かせるつもりだ。
デンソーの“タカダ”は1人ではない。

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